導入事例

A大学 様

2020年3月

学生数10,000名以上/大学

起業家マインドの教育/アントレプレナーシップ研修

学生数10,000人以上の総合大学において、理工系学生への科学、技術に対する教育活動に加えて、リーダーシップやアントレプレナーシップ教育に力を入れているA大学 産学連携教育研究センターのK先生にお話を伺いました。テーマは、どうやって理工系大学院生の起業家マインドを育成するかです。

お話し頂いた方

A大学 産学連携教育研究センター

K先生

地域の拠点大学として起業家を育てたいという願いがありました。

ー教育研究センターとK先生の役割について教えてください。

K先生:本学の理工系学部は、地方にある拠点大学として、地域における新しい科学、技術の発見と共同研究を通じて、産官学連携を強く進めております。社会は、学生に対して、単に科学や技術の知識レベルが高いというだけでなく、発見された科学、技術を活用して、新しい社会的価値を生み出せる能力を必要としております。いわゆる、アントレプレナーシップ、起業家魂を持った人材です。本学はこのような時代の要請に基づき、数年前から理工系大学院生の中から選抜された学生に対して、通常の博士課程に加えて、特別な教育プログラムを開発、実施してきました。私は、本プログラムにおいて、実際に学生を指導することに加え、企業との連携の枠組みを作り、産学連携によって、学生に効果的な学習環境を提供する立場にあります。

ーどんな教育プログラムなのですか。

K先生:大学院の修士課程から博士後期課程の5年間のうち、1年から4年までの4年間を通じて提供されるプログラムで、グローバルで活躍できるリーダーを育成することが目的です。教授陣による講義に加えて、海外留学、そして、これがプログラムの柱となるのですが、3から4人がチームを組み、グループワークによる研究・事業提案プラン(「グループリサーチプロポーザル」といいます)を作成します。専門研究分野の異なる学生が1つのチームとして結集し、それぞれの科学的知見を持ち寄って新しいデバイスのアイディアを出します。アイディアは、社会的価値のある新事業を創出するものである必要があります。荒唐無稽のアイディアではなく、実際にデバイスの実証実験を行い、科学的な裏付けも取ります。学生は、アイディア創出、実験、社会的価値提案に至る流れを1つの提案書にまとめる過程を通じて、リーダーシップやチームワークを学び、新たな事業創出・ベンチャーを作っていくというダイナミズムを体験します。

ーどのように進めたのですか。RUFTとの出会いはどのようにしておきたのですか。

K先生:大学としても全く新しい試みでしたので、様々な意見を取り入れて進めました。第一期生が入学し、3年が経過し、彼らが博士課程の2年生に進級するタイミングで、グループリサーチプロポーザルの指導が出来る実務家を探していたところ、本学に勤務する先生からRUFT代表の古屋さんのご紹介を受け面談の上、決定しました。それ以来、学生向けのアントレプレナーシップ教育を開始し、既に4期生が巣立っております。

学生は約1年かけて集大成としての冊子(グループリサーチプロポーザル)を完成させます。

ー学生は1年間を通じてどのようなことを実践しますか。

K先生:学生は、大きな液晶モニターをグループごとに利用できるように配置された専用のグループワークスペースを利用します。各チームはリーダーを決め、3から4人のメンバーがプロポーザルの4つの項目(技術、知的財産、社会的価値、リスク分析)を分担します。技術よりの提案では技術パートが40~50%、ビジネスよりの提案では社会的価値が40~50%の配分となります。4月から9月まで、数回の集中講義を実施し、先生と学生が一つのチームとして、各チームで決めたテーマについて議論を繰り返します。学生は、講義の間で、先生の指導により実験室における実証実験とフィールドワークによる市場調査を進めます。その結果を最終的に冊子の形式にまとめ、11月に中間発表、3月に最終発表となります。学生は、博士課程における自身の専門分野の研究に加えて、もう一つ提案書を作成することになり、ハードワークとなります。終了した多くの学生はとても意欲的で、楽しかった、ためになった、一般の理工系学生では学ぶことができない実践的な学習経験が出来たと、前向きな評価です。

ー学生に起業家マインドは生まれましたか。

K先生:生まれたと思います。事業化のための特許申請に至ったチームもありますし、中には、自分たちの力でベンチャーキャピタルから研究資金を調達して、プロトタイプを製造するチームもありました。どのチームも学生の若さ、熱気、そして体当たりの姿勢で、ニューベンチャー創造の貴重な体験ができたと思います。

企業からもアントレプレナーシップ研修を受けさせたいと要望がきています。

ー参加した企業の反応はどうですか。

K先生:各社ともに、非常に好意的な反応です。中間発表、最終発表には、大学にお招きして、学生の発表に参加して頂き、その場で実務的な観点でご指導を頂きます。学生はとても真面目に企業参加者の意見を聞き、自らの不足部分を発見します。中間発表後は、各チームのテーマによって、企業の方の個別指導を受ける形にしましたことも、学生と企業との接点が強くなり、真に実践的な学習の場になりました。実は、参画企業の方からは、自社の社員にも同じような研修を受けさせてみたいという声も上がっております。より広く、このような実践的なアントレプレナーシップ教育の場が世間に開放されることを期待します。

ー最後にアントレプレナーシップ教育を実践されて、注意点やメッセージはありますか。

K先生:アントレプレナーシップ、起業家マインドというと、生まれつきの性格の影響が強いと思われがちですが、本人の意欲と学習の場があれば育成可能であることがよくわかりました。本学から世界にはばたくベンチャー企業やスタートアップが生まれることを期待します。研究者として優秀であることはもちろん大事ですが、社会に出る前に、社会に対して貢献するという課題意識を持つ学生を輩出することは、より一層の日本の科学技術の発展、新事業の創出につながることと思います。

ー本日は、ありがとうございました。

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