あいおいニッセイ同和損害保険株式会社 様
2023年3月
損害保険事業
新規事業企画の実証実験(PoC)を通じた検証と分析
あいおいニッセイ同和損害保険株式会社は、1918年設立の損害保険事業会社です。国内、海外にネットワークを持ち、保険事業を営まれている大企業です。働き方も多彩で、渋谷区恵比寿の本社に加え、港区の虎ノ門ヒルズビジネスタワー4Fにあるインキュベーションセンター「ARCH」をベースに、新規事業の取り組みをされています。今般、デジタルビジネスデザイン部主導で進めている『相席食堂』プロジェクトの実証実験を行うにあたり、RUFTがそのお手伝いを行うことになりました。『相席食堂』とは、社会的養護が必要な児童達と大企業で働く社会人との食事やお茶を飲みながらの気楽な交流会です。児童は、これまで機会がなかった社会人と交流の場で、人生や就職における悩みや疑問について相談することができます。様々な意見交換によって、人生についての気づきを得ることができます。実証実験に参加される児童と社会人の募集は、株式会社セブン&アイ・ホールディングスが行っているオンライン越境学習事業『TSUMUGI』の協力を得て行いました。TSUMUGIは、社会的養護が必要な児童達と大企業の社員とのオンラインによる交流を通じて、大企業の社員の方に、社会的養護の解決に向けた提案を行ってもらう学習事業です。越境学習とは、固定的な仕事(ホーム)を離れて、普段接することがない(アウェイな)環境に身をおくことで、気づきを得る学習スタイルです。最近、非常に人気があり、多くの企業で取り入れられ始めました。『相席食堂』プロジェクトのご担当者である、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社 デジタルビジネスデザイン部の猪俣様・田郷様から、今回の実証実験を行ってみた感想をお聞きしました。
お話し頂いた方
あいおいニッセイ同和損害保険株式会社
デジタルビジネスデザイン部 プランニンググループ
課長補佐 猪俣 雄太 様(写真左)
主任 田郷 雄介 様(写真右)
社会課題の解決は、これからの企業の使命です。
―『相席食堂』とは、どんな事業なのでしょうか。
猪俣:自分が、『TSUMUGI』の研修に参加して、その時に解決策として提案したのが、『相席食堂』のコンセプトになります。社会的養護というテーマに対して、人々を支えることが使命である損害保険会社として何かできないか、そんな思いから思いつきました。社会的養護が必要な児童達は、大企業の社員との出会いを通じて、将来を考える上での大きな気づきを得ることができる一方で、企業側の参加者にとっては、自分の仕事や、おかれた立場を見直す良いチャンスになるという、双方にメリットのあるビジネスを構想しました。『相席食堂』は名前の通り、児童と企業側の参加者がお互いに腹を割り、対面で、同じ席で食事を取りながら、会話をするというものです。コンセプトは出来ましたが、本当に期待された効果はあるのか、ビジネスとして成り立つのか、実証実験をしてみようということになり、『TSUMUGI』の協力によって、参加者を募集し、実験を行いました。コロナの影響もあり、対面での食事はハードルが高いと思っておりましたが、今年に入り、コロナが落ち着きはじめたこともあり、2月に実施することができました。
―なぜ、RUFTに実証実験の支援を依頼したのですか。
田郷:実験を行うにあたり、実験後のアンケート調査をどのように進めるか悩んでいたときに、たまたまインターネット検索をして、RUFTを見つけました。古屋代表が、これまでの仮説検証型の実験に対するコンサルティング経験や、アンケートとインタビューを組み合わせた『GTA法』や『ミックス法』と呼ばれる独自の分析ノウハウをお持ちと分かり、依頼することにしました。RUFTは、エンゲージメントを調査・分析し、向上させる様々なサービスを提供しています。エンゲージメントをキーワードに組織開発、人材開発を行うコンサルティング会社ですが、『相席食堂』が、企業側参加者の『エンゲージメント』向上に寄与する効果も検証したいと思っていたため、ぴったりのコンサルティング会社でありました。
実験は大成功でした。
―実験によって、何がわかりましたか。
猪俣:RUFTとの定期的な打ち合わせによって、実験の準備を予定通り着実に進めることができました。実験後にアンケートやインタビューを実施し、『相席食堂』の満足度や感想、改善点等を明確にすることができました。さらに、実験前と実験後のアンケートをRUFTの独自の調査方法に基づいた内容にすることで、児童と企業側参加者の心理的変化も明確にすることができました。1回だけの検証でしたが、大きな変化が起きた参加者もあり、期待される効果があることがわかりました。児童、企業側参加者ともに、今回の実証実験の満足度も高く、全員から、継続的な開催を望む声も得ることができました。 また、ターゲットは社会的養護が必要な児童だけではなく、「情報格差が存在している」他の幅広い層にも広くニーズがあると、手ごたえを感じられたように思います。
―RUFTの報告書や報告会はどうでしたか。
田郷:『GTA』法や『ミックス法』による分析によって、事業化のための課題が明確になりました。『相席食堂』のコンセプトの正しさが証明され、社会課題の解決と事業としてのマネタイズを両立させる可能性が見いだせました。これまで、頭の中で、なんとなく考えていたことが、1つ1つ論理的に整理され、次のアクションが見えてきました。報告会には、実験にご協力頂いた『TSUMUGI』の事業責任者である月川伸彦さんにも参加頂いたのですが、月川さんからは、継続することが大事であり、更に、継続においては、『相席食堂』のコンテンツのブラッシュアップが重要であることの指摘を受けました。
事業化に向けて進めていきます。
―次は、どんなアクションになりますか。
猪俣:今回の実験によって、事業化のために必要な、多くの検討材料を得ることができました。事業として行うからには、マネタイズが必要です。どのようなビジネスモデルとするか、継続的な検証を行いますが、企業側参加者から収益を得るモデルを検討しています。『TSUMUGI』との協力関係をベースに、社会的養護が必要な児童を支援するほか、先に述べたように、より広く他の社会課題にも転用していくことも考えていきます。企業側参加者への効果としては、エンゲージメント向上効果を証明していき、社会課題解決事業として成り立つように推進していきたいと思います。
―ひとりでも多くの方に興味を持ってもらいたいです。
猪俣:働き方が大きく変化している時代です。コロナによって、自分の仕事やキャリアについて、これまでの働き方を見直したり、新たな挑戦を考える機会も増えてきたと思います。チャンスを捉え、一歩前に踏み出そうと考えている方や、一方で、今の仕事にあまり情熱を感じられない方、様々いると思います。『相席食堂』は、そうしたすべての方々が、それぞれの思いの中で社会課題に向き合える場です。参加者に新たな気づきを与え、当社が掲げるCSV×DX(シーエスブイ バイ ディーエックス)※のコンセプトを具現化するサービスになっていくことを願っています。
※CSV… Creating Shared Value (社会との共通価値の創造)
DX … Digital Transformation (データやデジタルを活用し、価値提供を変革させること)
―本日は、ありがとうございました。